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地方の飲食店が3年で潰れる「3つの数字」——廃業の予兆はデータに出ている

「去年までは普通に回っていたのに、気づけば人が足りず、シフトも価格も限界で、もう続けられない」。地方で店を営む方から、こうした声を聞くことが増えました。多くの場合、それは突然の出来事ではありません。数年前から数字に予兆が出ていて、ただ見えていなかっただけ——というのが実情です。

経営の危機は、売上が落ちる前に「人」と「コスト」の側から静かに進みます。そして地方のサービス業では、その進行を予言する数字がだいたい決まっています。この記事では、店の数年後を映す「3つの数字」を取り上げ、それぞれの意味と、自分の店に当てはめて読む方法を解説します。難しい分析は要りません。電卓ひとつで、今日のうちに自店の現在地を確かめられます。

なぜ「3つの数字」を見るのか

経営者は普段、売上と利益を見ています。それは当然ですが、売上は「結果」であって「予兆」ではありません。売上が落ちてから気づいても、打てる手は限られています。

予兆は、その手前にあります。働く人がどれくらいの速さで入れ替わっているか。新しく人を採れる見込みがどれだけあるか。そして、人を雇い続けるコストがどう動いているか。この3つは、売上が崩れる「前」に変化が表れ、しかも互いに掛け算で効いてきます。だからこそ、早く知れば早く備えられる。順に見ていきます。

数字1:離職率——「何人辞めるか」が未来を決める

最初の数字は離職率です。宿泊・飲食サービス業は、公的統計でも全産業の中で人の入れ替わりが特に激しい業種として知られています。とりわけ規模の小さい事業所ほど、その傾向は強く出ます。

自店の離職率は簡単に出せます。1年間に辞めた人数を、年初の在籍人数で割るだけです。たとえば10人の店で年に3人が辞めていれば、ざっくり3割。これを「うちは入れ替わりが多いほうだ」で済ませず、数字にすることが第一歩です。

ここで考えてほしいのは、3年後に何人残っているか、です。毎年同じ割合で抜けていけば、数年後にはベテランがほとんど入れ替わってしまう、という未来が見えてきます。採用と教育に追われ続け、現場にノウハウが積み上がらない。離職率は、その悪循環の入口を映す数字です。

数字2:採用の母数——「そもそも採れるのか」

2つ目は、採用できる人の母数です。離職率が同じでも、抜けた穴を埋められるかどうかは別問題です。

地方では、働き手になる世代の人口そのものが年々減っています。これは個々の店の努力とは関係なく進む構造的な変化で、「募集を出せば来る」という前提が崩れつつあることを意味します。都市部の店や他業種とも同じ人材を奪い合うため、条件で見劣りすれば応募は集まりません。

離職率(出ていく速さ)と採用の母数(入ってくる見込み)はセットで見る必要があります。出ていく速さが変わらないまま、入ってくる見込みだけが細っていく——これが、多くの地方店がこれから直面する現実です。

数字3:最低賃金——「雇い続けるコスト」の上昇

3つ目は最低賃金です。近年、最低賃金は継続的に引き上げられており、地方の店ほど、この上昇がそのまま人件費の増加に直結します。時給が上がること自体は働き手にとって望ましいことですが、価格に転嫁できなければ、店の利益は確実に圧迫されます。

ここでも電卓を使ってみてください。総労働時間に時給の上昇分を掛ければ、人件費が年間でどれだけ増えるかが出ます。「数十円の値上げ」と感じる金額も、店全体の労働時間に掛け合わせると無視できない額になります。

3つが重なると、何が起きるか

この3つは、別々に来るのではなく、同時に、しかも掛け算で来ます。人が辞める速さは変わらない。埋める人は採りにくい。残った人を雇うコストは上がる。すると、少ない人数を高いコストで回すことになり、現場は疲弊し、それがまた離職を呼ぶ。数字どうしが互いを悪化させる連鎖に入っていきます。

繁盛しているように見える店が突然立ち行かなくなるのは、この連鎖が水面下で進んでいたからです。逆に言えば、3つの数字を早く把握すれば、連鎖が深まる前に手を打てます。

明日からの第一歩

最も簡単な一歩は、今日のうちに自店の3つの数字を紙に書き出すことです。

  1. 離職率——昨年1年で辞めた人数 ÷ 年初の在籍人数。
  2. 採用の見込み——直近1年で「募集に対して何人応募があったか」。年々減っていないか。
  3. 人件費の増加見込み——総労働時間 × 想定される時給上昇分。

この3つを並べるだけで、自店が「連鎖の入口」にいるのか、まだ余裕があるのかが見えてきます。数字は怖いものではなく、早く動くための味方です。見えてしまえば、価格の設計も、人の定着策も、採用の打ち手も、ひとつずつ順番に組み立てられます。

地方の店が数年後も続いているかどうかは、運ではなく、こうした数字をいつ直視したかで決まる——私はそう考えています。

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