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食べログにお金を払えば客が来た時代は終わった——2つの事件が変えた集客の地図

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グルメサイトの有料プランに毎月お金を払い続けている。それなのに、以前ほど予約が入らない。アクセス数も数年前の半分以下になった気がする——地方の飲食店で、こうした実感を持つ人は少なくありません。

「払えば客が来る」。長いあいだ、これは飲食店集客のもっとも確実な方程式でした。グルメサイトに掲載し、上位プランに申し込めば、それに見合った来店があった。ところが、この方程式はある時期を境に崩れ始めます。料理を変えたわけでも、値上げをしたわけでもないのに、効きが悪くなった。

理由は、店側の努力不足ではありません。消費者が店を選ぶときの「前提」が変わったからです。そしてその変化の引き金になったのが、2022年と2023年に起きた2つの事件でした。この記事では、その2つが何を壊し、集客の地図をどう塗り替えたのかを整理します。

事件その1:点数の「妥当性」が揺らいだ

ひとつ目は、グルメサイトの点数をめぐる裁判です。焼肉チェーンを運営する企業が、食べログを運営する会社を相手取って起こした訴訟がありました。チェーン側の主張は、サイト側がアルゴリズム(点数の計算方法)を変更したことで、チェーン店の評価点が一律に下げられ、結果として来店数が減り売上が落ちた、というものです。

書籍が引く記述によれば、裁判所はこの主張を一部認め、次の判断を下しています。

東京地裁は、この主張を認めました。食べログのアルゴリズム変更が韓流村の営業に損害を与えたとして、約3,840万円の支払いを命じたのです。 飲食店デジタルマーケティング実務書(仮題)第1章

ここで重要なのは賠償額そのものよりも、この判決が消費者と店主の「認識」に与えた影響です。それまで多くの人は、グルメサイトの点数を「客観的で動かしようのない評価」だと信じていました。ところがこの一件をきっかけに、「点数は計算方法しだいで上下しうるものだ」という事実が広く知られることになります。

消費者の側には「この点数は、本当に信頼できるのか」という疑念が生まれました。店主の側には「自分が何年もかけて積み上げてきた点数も、運営会社の都合で変わりうる」という不安が残りました。点数を信じる前提が崩れた——これが1つ目の事件の本質です。

事件その2:クチコミの「信頼性」が問われた

ふたつ目は、広告に関するルールの変更です。広告であることを隠して宣伝する行為、いわゆるステルスマーケティングを規制する制度が導入されました。一般客を装った好意的なレビューや、宣伝であることを伏せた紹介が、明確に違反となったのです。

飲食業界では、グルメサイトやSNS上で「お客さんのふりをした好意的な書き込み」が珍しくありませんでした。新しい規制は、こうした行為に正面から線を引きました。さらにこの規制のもとでは、クチコミの集め方そのものも問われます。たとえば「高評価を書いてくれたら割引する」「低い評価をつけた客に変更を頼む」といった、会計時に何気なく行われがちなお願いも、やり方しだいで違反になりうる領域に入ってきました。

この変化が消費者にもたらしたのは、「クチコミは演出されているかもしれない」という新しい目線です。星の数や絶賛のコメントを、額面どおりには受け取らない。実際に行った人の写真や、店からの返信の様子まで見て、自分で真偽を判断しようとする。クチコミを信じる前提もまた、ここで揺らいだのです。

2つの事件が「地図」を塗り替えた

1つ目の事件は点数の妥当性を、2つ目の事件はクチコミの信頼性を揺さぶりました。この2つが重なったことで、消費者の行動原理が変わります。グルメサイトの点数だけを頼りに店を選ぶ、という習慣が成り立たなくなったのです。

ここで誤解してはいけないのは、これは「グルメサイトが消えた」という話ではない、ということです。サイトの利用者数はいまも巨大で、予約の導線としては依然として有力です。変わったのは、店を「見つける」「確かめる」段階での主役の座です。人はSNSで店を知り、地図アプリでクチコミと写真を確かめ、最後にグルメサイトや店のサイトで予約する。発見・検証・予約が別々の場所に分かれた結果、「予約の場所」であるグルメサイトにいくら払っても、見つけてもらう段階はカバーされなくなりました。

だからこそ、「払えば客が来る」の効きが悪くなったのです。お金を払って確保していたのは、いまや消費者導線の最後の一区間だけ。手前の「見つけてもらう」「確かめてもらう」区間が、まるごと別の地図に移っていた。

では、どこに投資を移すべきか

結論は「グルメサイトを切れ」ではありません。予約導線として機能しているなら、それは残す価値があります。見直すべきは投資の配分です。これまで発見から予約まで一手に頼っていたグルメサイトを、予約の役割に絞って評価し直す。そして、これまで手薄だった「見つけてもらう」「確かめてもらう」段階——SNSでの発信や地図アプリの整備、クチコミへの誠実な向き合い方——に、時間とお金の一部を振り向ける。

2つの事件は、店から何かを奪ったわけではありません。集客の地図を書き換えただけです。新しい地図のどこに自分の店を置き直すか。

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