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福島県の最低制限価格の計算方法|公開された算定式から落札ラインを逆算する

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公共工事の入札で札を入れられる金額は、「最低制限価格以上、予定価格以下」という狭い帯に限られます。しかもこの帯は対称ではありません。最低制限価格をわずか1円でも下回れば、たとえ最安値でも無条件で失格になる。だから落札できるかどうかは、コストを下げる努力よりも、発注者が引いた下限線をどれだけ正確に言い当てられるかで、構造的に決まります。

福島県は、この下限=最低制限価格等の算定式を公表しています。式が公開されているということは、予定価格を正確に組み立てられれば、最低制限価格は式に従って一意に逆算できるということです。本記事では、福島県が公表する最低制限価格等の算定式を、順を追って分解します。

「最低制限価格」とは何か

最低制限価格は、これを下回れば無条件で失格になる絶対的な下限線で、価格競争の入札で使われます。よく混同される調査基準価格は、下回っても直ちに失格ではなく、発注者が内訳を調べて履行できるかを審査する値で、性質が異なります。福島県では、この価格競争の最低制限価格と、総合評価方式で用いる調査基準価格・評価基準価格をあわせて「最低制限価格等」と呼びます。

なお福島県は予定価格を事後公表しており、最低制限価格等も入札結果として各発注機関が事後に公表します。

算定式の全体像

福島県の最低制限価格等は、大きく言えば次の形で決まります。

まず、多くの自治体が準用する中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)の標準式で基礎となる額を出し、そこに県独自の係数を掛け、最後に予定価格の87〜92%という範囲に収める――この三段構えです。当該算定式は、令和4年4月1日以降に起工する工事から適用されています。

以下、実際の計算順に分解します。順序そのものが結果を決めるため、ステップの入れ替えはできません。

① 中央公契連モデル式で基礎額を出す

費目ごとに、次の係数を掛けて合計します。

  • 直接工事費 × 0.97
  • 共通仮設費 × 0.90
  • 現場管理費 × 0.90
  • 一般管理費等 × 0.68

各費目に係数を掛けた額は、それぞれ1円未満を切り捨ててから合計します。ここで一つ注意点があります。一般管理費等の係数は令和4年4月の改定で0.55から0.68へ引き上げられました。旧値の0.55を載せたままの解説が今も出回っていますが、これを使うと下限を数パーセント低く見積もり、失格を招きます。係数は必ず公式の最新版で確認してください。

② 第1のクリップ(基準は工事価格)

①の合計額が、工事価格の92%を上回れば工事価格×0.92を、工事価格の87%を下回れば工事価格×0.87を採用します。ここでの判定と置換の基準は、いずれも工事価格です。

③ 県独自係数Aを掛ける

福島県は、②の額に県独自の係数Aを掛けます。Aは工事価格を変数とする対数式で、次のように定義されます。

A = −0.02 × log(工事価格) + 1.3765(logは自然対数、Aはまるめない)

工事の規模が大きいほどAは小さくなり、大規模工事の下限をやや圧縮する向きに働きます。

④ 100円未満を切り捨てる

②に③を掛けたのち、100円未満を切り捨てます。ちなみに福島県では、令和6年11月18日の改定で、旧来の「1,000円まるめ」の表記が削除されました。端数のまるめ単位や位置は改定で動くため、適用する案件の基準で確認するのが安全です。

⑤ 第2のクリップ(基準は予定価格)

最後に、予定価格の87〜92%の範囲に収めます。範囲を上回れば上限値、下回れば下限値に張り付きます。ここでの基準は予定価格です。

つまずきやすい「二段階クリップ」

この算定式で最も間違えやすいのが、上下限の判定(クリップ)が二か所にあり、しかも基準額が違う点です。第1のクリップは工事価格が基準、第2のクリップは予定価格が基準。原文はこの二つの語を意図して使い分けています。両者を取り違えて同じ基準で二度クリップすると、境界付近の案件で下限を読み誤ります。

そして順序も固定です。①モデル式の合計 → ②工事価格でクリップ → ③県独自係数A → ④100円未満切り捨て → ⑤予定価格でクリップ。この順を一手でも違えると、最後の数円が合わず、最低制限価格をわずかに割って失格、あるいは同額に届かずくじ引きの母集団から外れます。

なぜ「同額くじ引き」が起きるのか

算定式・係数・端数・上下限がすべて公開され、固定されています。ということは、予定価格を完全に再現できれば、最低制限価格は一意に定まります。結果として、積算精度の高い複数社が同じ金額に張り付き、電子くじ引きで落札者が決まる場面が日常的に起こります。

ここで落札は、価格の優劣ではなく、同額に到達できた社の間での抽選――確率の問題に変わります。精度を上げることは土俵に上がるための必要条件ですが、それだけで勝てる十分条件ではない、という認識が要ります。

混同しやすい「費目別の失格基準」

低入札価格調査の対象になった場合には、上記の最低制限価格の算定とは別に、費目別の失格基準があります。これは最低制限価格の算定係数(0.97/0.90/0.90/0.68)とは別物なので、混同しないことが大切です。

具体的には、設計額における相当額に対して、直接工事費が0.95倍未満(入札額が税込5千万円以下の場合)または0.9倍未満(5千万円超の場合)、共通仮設費が0.9倍未満、現場管理費が0.7倍未満、一般管理費が0.45倍未満のいずれかに該当すると失格となります。なお調査基準価格の設定方法・金額は非公表です。

実務で押さえておきたいこと

最後に、逆算を実際の案件に当てるうえでの注意点を挙げます。

算定式の適用の有無は、入札公告に記載されます。案件ごとに公告で確認してください。また、県の算定式が県内の市町村に一律で適用されるわけではありません。たとえば会津若松市やいわき市は、開札時に無作為の係数を乗じる変動型(ランダム係数)を導入しており、県の固定式をそのまま当てはめると読み違えます。

そして、単価・係数・基準は時点で改定されます。労務単価は毎年、資材単価は毎月、諸経費率や補正係数も年度で動きます。逆算の精度は、正しい式を組めることと同じだけ、適用時点の最新の値を一次情報で押さえられるかにかかっています。


福島県の最低制限価格を、費目から逆算してみる

本記事で分解した算定式は、そのまま動かせるツールとして公開しています。直接工事費・共通仮設費・現場管理費・一般管理費を入力すると、中央公契連モデル式から県独自係数、二段階のクリップ、端数処理までを上記の順で計算し、最低制限価格等と対予定価格の落札率を表示します。 → 最低制限価格 逆算エンジン(福島県)

最新の単価・係数・市町村制度の反映や、図面精査から最終的な金額判断までの積算精度の伴走は、ディベル合同会社がご相談を承ります。 → ディベル合同会社に相談する

本記事は公開された算定式・制度資料に基づく解説です。実際の適用可否や数値は、入札公告および各発注機関の最新の要領で確認してください。係数・単価・制度は改定頻度が高いため、応札時点の基準で再確認することをおすすめします。

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